着物を着る仕事ガイド:種類と適性を解説
こんにちは、ハーモニーニッポンのライターです。着物って、見ているだけでも背筋が伸びるような、特別な魅力がありますよね。「着物を着る仕事」って、なんだか日本の伝統文化に深く関われるようで、すごく憧れませんか?
でも、いざ「働いてみたい」と思って調べてみると、「着付けなんて習ったことないけど、未経験からでも大丈夫?」「専門の資格なしでも働ける場所はあるのかな?」といった、たくさんの疑問が出てくると思います。私も最初はそうでした。
それに、ひとくちに「着物を着る仕事」と言っても、旅館の仲居さんや格式ある料亭、華やかな呉服店、またはプロの着付け師など、職種は本当にさまざまです。「まずはバイトやパートで試してみたい」という方もいれば、「正社員としてしっかりキャリアを築きたい」という方もいますよね。
中には「50代からでも新しい挑戦は可能かな」と年齢を気にされたり、「実際、着物で動き回る仕事はきついんじゃない?」なんて、体力的な不安を感じている方もいるかもしれません。
この記事では、そんな「着物を着る仕事」に関するいろいろな疑問や不安を解消するために、仕事の具体的な種類や、それぞれに求められる適性、そしてキャリアの可能性について、私がじっくり調べたことを私の視点でまとめてみました。
- 着物の仕事の2つの大きな流れ(制服か技術か)
- アルバイト・正社員など雇用形態別の特徴
- 「きつい」と言われる仕事の体力的な現実
- 未経験や50代からでも活躍できる可能性
着物を着る仕事の2つの道筋

着物を着る仕事に興味を持って求人情報などを見てみると、実はそのキャリアパスが大きく分けて2つのタイプに分類できることが見えてきました。ひとつは、着物を「制服(ユニフォーム)」として着るお仕事。もうひとつは、着物そのものや着付けを「専門技術」として扱うお仕事です。
この根本的な違いが、働き方や求められるスキル、そしてキャリアパスにまで大きく関わってくる、とても重要なポイントみたいですね。
求人に見る仕事の種類:制服系
まず、私たちが「着物で働く」と聞いてパッとイメージしやすいのが、こちらの「制服系」かもしれません。旅館の仲居さんや、高級な和食店・料亭のホールスタッフ、呉服店の販売員などがこれにあたります。
この分野では、着物はあくまで業務を行うための「制服」としての役割が大きいです。そのため、お仕事の中心は着物の知識そのものよりも、お客様への「おもてなし」です。お客様のお出迎えから配膳、お世話、そして商品のご提案まで、非常に高いレベルの接客スキルが求められます。
着物自体は職場から貸与される(借りられる)ことも多いみたいで、着付け(自分で着る「自装」)は、入社してから研修などで教えてもらえるケースも少なくないようです。ですから、「着物は好きだけど、自分で着られない」という方でも挑戦しやすい分野と言えそうですね。
制服系のお仕事例
- 旅館の仲居(お客様のお世話全般)
- 料亭・和食店のホールスタッフ(接客・配膳)
- 呉服店の販売員(接客・販売・コーディネート提案)
- 着物レンタル店の受付・接客スタッフ
この分野の最大の魅力は、働きながら美しい所作や一流のテーブルマナー、丁寧な言葉遣いが自然と身につくことですね。まさに、日本が誇る「おもてなしの心」を体現するお仕事だと思います。
ただ、優雅なイメージとは裏腹に、実際には「着物を着て動き回る、動的な仕事」であるという側面もあって、詳しくは後述しますが、結構な体力勝負でもあるようです。
求人に見る仕事の種類:技術職系

もう一方の道は、着物そのものや、着物に関する知識・技術を「専門技術」として扱うお仕事です。こちらは「プロフェッショナル」な分野ですね。
代表的なのは、お客様に美しく着物を着せる「他装(たそう)」のプロフェッショナルである「着付け師」さんです。美容室や結婚式場、ホテルの衣装室、写真館などが主な活躍の場となります。七五三、成人式、結婚式など、お客様の人生の大切な「ハレの日」に立ち会える、とてもやりがいのあるお仕事だと感じます。
ただし、こちらは「制服系」とは異なり、プロとしての高度な技術が必須です。「美しく、苦しくなく、着崩れない」着付けを素早く行うスキルが求められ、その技術を認定する「着付け技能士」という国家資格もあるくらい、専門性が高い分野です。
技術職系のもう一つの道
ほかにも、着物を一から仕立てる「和裁技能士」という職人さんの道もあります。これはもう、ミシンを使わず手縫いで仕上げる、日本の伝統文化を技術面から支える「モノづくり」の世界ですね。手芸や職人の仕事に興味がある方に向いているかもしれません。
バイトで多い職種とは?
「まずは生活スタイルに合わせて、アルバイトやパートから始めてみたい」と考えている方も多いと思います。私も気軽に始められるなら…と調べてみました。
求人情報を見ていると、特にアルバイト・パートの募集が多いと感じたのは、料亭・和食店のホールスタッフと、観光地の着物レンタル店のスタッフです。
特に東京や京都などの都市部にある高級和食店では、時給1,600円や、中には2,000円を超えるような、かなり高時給の募集も目立ちました。これは、おそらくお客様の層が富裕層や著名人であることも多く、失敗の許されない重要な接待の場などで、完璧な接客術や和食のテーブルマナーの知識が求められることの裏返しなんでしょうね。
また、着物レンタル店のお仕事も、京都(祇園・嵐山)、東京(浅草)、鎌倉といった国内外の観光客が集まるエリアを中心に、たくさんの募集があります。こちらは受付業務、着物選びのお手伝い(コーディネート)、簡単な着付けの補助、ヘアセットなどが主な内容のようです。繁忙期はスピードと効率が求められる、アクティブな職場みたいですね。
正社員で目指すキャリア

一方で、腰を据えて「正社員」として安定したキャリアを築きたい、専門性を高めたいと考えるなら、呉服店の販売員(着物アドバイザー)の求人が多い印象を受けました。
こちらは単に着物を売る「販売員」というだけでなく、お客様の好みやTPO(時・場所・場合)を伺いながら、成人式や結婚式といった人生の節目に寄り添い、トータルコーディネートを提案するお仕事です。一度購入いただいたお客様とDMや電話で長期的な関係を築いていく、顧客管理(CRM)や営業の側面も強いのが特徴ですね。自分の提案がお客様の喜びに直結する、やりがいのある仕事みたいです。
もちろん、呉服店以外にも正社員の道はあります。
- 旅館の仲居(経験を積んで「女将」やマネジメント職へ)
- 着物レンタル店の店長・運営管理(スタッフ採用や売上管理など)
- 美容室所属の着付け師(美容師と兼任または専属)
- 神社の巫女(正職員としての募集も有り)
これらのお仕事は、長期的な雇用を前提に、専門スキルやマネジメント能力をじっくりと育てていくキャリアパスが用意されていることが多いようです。
仕事はきつい?身体的な負担
着物で働くって、なんだか優雅で静かなイメージがありますけど、実際はどうなんでしょうか。この点は、私もすごく気になってリアルな声を調べてみました。
結論から言うと、ほぼどの職種も「見た目以上に体力勝負」「優雅に見える水面下では、必死に足を動かしている白鳥」という声が圧倒的に多いようです。
職種別の「きつさ」の現実
例えば、旅館の仲居さんは、お客様の荷物を運んだり、重い食器が乗ったお膳を何度も運んだり、客室の布団の上げ下ろしがあったりと、業務内容は「肉体労働」と表現されるほど。さらに「中抜け」という長時間の休憩を挟む勤務体系で、拘束時間が長くなりがちな点も特徴です。
着付け師さんも、「着付けは体力勝負」とよく言われるそうです。着崩れないように紐を強く結ぶ力仕事であり、お客様の体型に合わせて立ったり座ったり、中腰の姿勢を繰り返すため、肩こり、腰痛、膝痛、腱鞘炎といった職業病を抱える方もいるみたいです。
着物レンタル店でも、週末や観光シーズンの繁忙期はとにかくスピード勝負。お客様を次々とさばくため、立ったり座ったりを短時間で激しく繰り返すため、「膝や普段使わない筋肉が痛くなる」という声もありました。
そして、これらすべての職種に共通しているのが、慣れない足袋や草履での長時間の立ち仕事による「足の疲れや痛み」ですね。
着物で働くことの覚悟
「優雅で楽しそう」という憧れのイメージだけでなく、着物特有の動きにくさ(洋服のようには走れません)や、重いものを持つ力仕事、中腰や立ち仕事が続くという身体的な負担があることは、働く前にしっかり理解しておく必要がありそうです。
また、汗をかいた後の着物のお手入れや、常に「着崩れしていないか」を意識し、美しい立ち居振る舞いを保ち続けるという、精神的な緊張感も求められるお仕事ですね。
着物を着る仕事の適性とキャリア

ここまでは仕事の種類や、ちょっとシビアな現実的な面も見てきました。ここからは「じゃあ、自分にもできるかな?」「どんな人が向いているの?」という適性やキャリアパスについて、さらに深掘りしてみたいと思います。特に未経験や年齢の不安についても、興味深いことが分かりましたよ。
未経験から資格なしで可能か
「着物にすごく興味はあるけど、専門学校も出ていないし、経験も資格もまったくない…」という方、ご安心ください。私が調べた限り、多くの仕事が「未経験OK」「資格なしOK」で募集されていました。
特に、先ほど分類した「制服系」のお仕事(旅館の仲居さん、料亭のホール、呉服店の販売員、着物レンタル店のスタッフ)は、そのほとんどが未経験者を歓迎していました。
その背景には、企業側の明確な理由があるようです。第一に、これらの職種で求められるスキル(高度な接客マナー、独自のサービス手順、礼儀作法など)は、外部の資格で学ぶものというより、各企業が独自に持つノウハウであり、「入社後のOJT(現場研修)でしか教えられない」OJT依存型であるためです。
実際、ある呉服店の求人では「スタッフの90%以上が呉服業界未経験からスタート」とありましたし、別の日本料理店でも「スタッフの約7割が業界未経験者だった」という例もありました。
充実した研修制度の例
未経験者を採用する前提であるため、研修制度が非常に充実している傾向があります。
- 立ち居振る舞い、言葉遣いの基礎研修
- 着物の着付け(まずは自分で着る「自装」から)
- 外部講師を招いての接客マナー研修
- 専門研修(お茶のお稽古、日本舞踊、ヘアメイクなど)※職場による
働きながら、自分自身も内面から美しくなれそうな環境ですね。
必要な資格と役立つスキル
業務遂行に「必須」の資格はほぼありませんが、持っているとご自身のキャリアや専門性を証明する上で、強みになる資格やスキルも確かに存在します。
専門職を目指すなら(国家資格と民間資格)
もし「着付け師」のような専門職を本気で目指すなら、「着付け技能士(1級・2級)」という国家資格があります。これは「他装」(他人に着物を着付ける)の技能を対象とした、この分野で唯一の国家資格です。
ただし、これは「初心者がまず取る資格」というより、2級で2年以上、1級で5年以上の実務経験(※学歴等で短縮あり)が必要な、「プロがその技術を国家レベルで証明するための資格」という位置づけです。
まずは民間スクールや協会が認定する「着物マイスター®」や「和装師範」などの資格を取得し、技術を身につけるのが一般的です。特に「師範」以上のクラスを取得すると、将来的に個人で着付け教室を開く際の「信頼の証(看板)」として役立つようです。
資格以外で歓迎されるスキル
資格以外で、どの職場でも歓迎され、ご自身の強みになるスキルもあります。
- 語学力(英語など):旅館や観光地のレンタル店では、インバウンド(訪日外国人客)の増加に伴い、英語で対応できるスタッフは非常に重宝されます。
- ヘアメイク技術:着付け師として働く際、着付けとヘアメイクを両方担当できると、結婚式場や美容室での需要が格段に高まり、任せてもらえる仕事の幅が広がります。
- 接客・サービス系検定:「サービス接遇検定」や「秘書検定」で学ぶ内容は、仲居さんや料亭スタッフなど、高度なおもてなしが求められる仕事全般で高く評価されます。
50代、ミドル・シニアの活躍

私が今回求人情報を調べていて、一番勇気づけられたというか、驚いたのが、「50代」や「ミドル・シニア」を歓迎する求人が非常に多かったことです。
特に料亭や高級和食店、旅館、呉服店など、上質で丁寧な接客が求められる場所では、若い世代にはない「豊かな人生経験」や「落ち着いた物腰」「円熟した接客スキル」が、むしろ「貴重な資産(アセット)」として高く評価されていました。
「50代で未経験から始めた方も20年以上活躍できます」「20代~50代と幅広い世代が活躍中」といった記載も多く、年齢を重ねたからこそ、その魅力がお客様からの信頼につながる職場があるというのは、すごく素敵だなと思います。
こうしたセカンドキャリアの選択肢は、まさに50代からのキャリアチェンジを考える上で、非常に有力な市場であると言えそうですね。
キャリアパスと求人の探し方
これから実際にお仕事を探すなら、ちょっとした検索のコツがありそうです。私たちが最初に思いつく「着物を着る仕事」というキーワードは、いろいろな職種が含まれすぎていて、実はちょっと広すぎるみたいなんですね。
「どんな仕事があるかな?」と調査する第一段階では有効ですが、いざ「ここで働きたい」という具体的な求人を探す段階(応募段階)になると、ミスマッチが起こりやすいかもしれません。
実際の求人検索では、もっと具体的な職種や分野にキーワードを絞り込むことが、最適な仕事を見つけるための近道です。
【目的別】効果的な検索キーワードの組み合わせ例
ご自身が興味を持った分野に合わせて、以下のようにキーワードを具体化・絞り込むのがおすすめです。
| 接客・おもてなし系 | 「仲居 求人 未経験」「旅館 接客 バイト」「和食 ホール 着物」「料亭 接客 高時給」「和装 ホールスタッフ 50代」 |
| 販売・レンタル系 | 「呉服店 販売 正社員 未経験」「着物 アドバイザー 求人」「着物レンタル スタッフ バイト 京都」「着物 受付 浅草」「着物 ヘアセット バイト」 |
| 専門技術系 | 「着付け師 求人 結婚式場」「美容室 着付け スタッフ」「着付け パート」「和裁士 募集」 |
| その他 | 「巫女 アルバイト 正月」「巫女 正社員 東京」「着付け 講師 求人」 |
自分に合う着物を着る仕事の見つけ方
ここまで「着物を着る仕事」について、憧れの側面と、ちょっと大変な現実面の両方から、いろいろと見てきました。
憧れのおもてなしの世界でマナーや所作を極める道、専門技術を磨いてお客様の「ハレの日」を支えるプロフェッショナルになる道、どちらも本当に魅力的です。しかし同時に、どの仕事にも「体力勝負」という共通の現実があることも分かりました。
一番大切なのは、自分が着物とどう関わりたいのか、「着物を『制服』として着て、おもてなしをしたい」のか、それとも「着物を『技術』として扱って、専門性を高めたい」のかを、まず自分の中でハッキリさせることかもしれませんね。
ご自身の体力やライフスタイル(バイトか正社員か、早朝勤務は可能かなど)と照らし合わせながら、最適な道を選んでいくことが大事かなと思います。
最後になりますが、この記事で紹介した時給や月給などの待遇、また「未経験OK」といった採用基準は、あくまで私が見た求人情報の一例です。地域や、ご自身の経験・スキル、そして応募する企業の規模によっても大きく変動するものだと思います。
具体的な条件や研修内容については、必ず実際の求人情報や応募先の企業に直接ご確認いただきますよう、お願いいたします。
この記事が、あなたご自身にぴったりの「着物を着る仕事」を見つける、最初のきっかけになれば、私もとても嬉しいです。
